リジェネラティブ農業 とは

2023年4月19日

美登里
美登里
美登里です、こんにちは。
リジェネラティブ農業という言葉をきいたことがありますか?
日本語に訳すると「環境再生型農業」です。
サスティナブル(ずっと続けていける・持続可能な)は、世の中にかなり浸透してきましたね。

リジェネラティブ農業の源流は自然農法

アメリカやヨーロッパを中心に取り入れられているリジェネラティブ農業は、
土を耕さず、肥料も農薬も使わずに、土壌とそこにすむ生物(植物や微生物)のサイクルを生かす、日本の自然農法から派生しています。

有機農法も、農薬や化学肥料を使わず有機肥料を使って、自然環境を守りながら栽培する点で理念は同じです。

「リジェネラティブ(再生、回生)」という考え方は、自然環境を維持するだけではなく、根本的な問題を解消(解決)した上で環境を改善していこうとする、「サスティナブル(持続)」よりも更に一歩前進した取り組みです。

 

リジェネラティブ農業は世界の流れ

農業が、根本的に解決に貢献できる問題をあげると、やはり地球温暖化でしょう。
温室効果ガスのひとつである二酸化炭素は、人間の産業活動によって地球の環境バランスを崩すまでに増えています。
問題の解決には、地球規模での取り組みが必要です。

リジェネラティブ農業は、この課題をどのように解決しようとしているのかを見ていきましょう。

もう少し問題をはっきりさせると、
二酸化炭素を光合成によって酸素に変えてくれている植物の存在がありますが、それでも排出量のほうが年間に43億t上回っています。
温暖化の原因となっているのは、空気中の炭素量です。
この空気中の炭素を、土壌へ分解されにくい形で閉じ込めることができないでしょうか。

「気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)」が2015年に開催されました。パリで行われた同会議で、フランス政府が強いリーダーシップを発揮して国際社会へ働きかけたのが、4(フォー)パーミル イニシアティブ です。
「4パーミル」とは、空気中から土壌中へと移動させる炭素量の ”目標値” になります。

「全世界の土壌に含まれる炭素量を、毎年4/1000(フォーパーミル)ずつ増やしていければ、大気中のCO2を相殺することになり、結果的にCO2増加量をゼロに抑えられる」

2021年6月時点で、日本を含む623の国や国際機関・ビジネスブランドが参加し、独自の取り組みをしています。

 

日本での取り組み(1)

果樹栽培日本一の山梨県では、土壌への炭素貯留によって、温室効果ガスのひとつである二酸化炭素の排出を減らすため4パーミル・イニシアチブの取り組みを推進しています。

具体的には、
特産品の桃やナシなどの果樹園では、伐採された枝(剪定枝)が出ます。
山梨県の取り組みでは、これを焼いてしまうのではなく燃える炭にします。
完全に燃やせば「」と二酸化炭素になって空気中に広がってしまいますが、「」にすれば個体の炭素は土壌に埋めれば分解されにくく、微生物にとってもよい環境が出来上がる、というわけです。
4パーミルイニシアティブについて(山梨県)

このようにして炭素を分解されにくい形で土壌に閉じ込める、つまり空気中へ排出させないようにする(脱炭素)ことができます。

その後東京や神奈川など、全国13の都や県も、4パーミル・イニシアチブの取り組みに参加しました。

 

リジェネラティブ農業の4つの目的

4パーミル イニシアティブのもとに、世界的に広がっているリジェネラティブ農業ですが、どのように定義されているのでしょうか。

2019年の国際連合のクライメートアクションサミットをもとに、農業の生物多様性に特化したビジネス連合・One Planet Business for Biodiversity (OP2B) は、リジェネラティブ農業の4つの目的を以下のように定めています。

1. 農場とその周辺おける生物多様性の保護と向上
2. 土壌の中における炭素と水の保持能力を高め、植物と家畜、農業の力を活用すること
3. 肥料や殺虫剤の使用を減らしながら作物と自然の回復力を高めること
4. 農場コミュニティの生活サポート

農業の枠を超え、
全体を「農場」ととらえ、畜産業も含めての連携・コミュニティ作り、その生活サポートまでが視野に入っています。

日本語で「環境再生型農業」と呼ばれるリジェネラティブ農業は、
農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復・改善しながら自然環境を回復に繋げていくための農業です。

 

リジェネラティブ農業の実践手段

リジェネラティブ農業を実践するための具体的手段としては、以下のようなものが挙げられます。

不耕起栽培

土を掘り起こさないことで土壌の攪拌を防ぎ、空気中の炭素をより多く地中に留められるようにする。
トラクターなどの機会を使わないことで、エネルギーを消費せず、二酸化炭素の排出を減らす。

被覆作物の活用

露出する地面を覆うように植物を植えること。または、雑草などを根ごと抜いて捨てるのではなく根の上の方で刈り、刈ったところより下の根はそのまま土に残す。土壌流出が緩和し、土壌有機物(炭素)を溜め込みやすくなる。

輪作

同じ土地で異なる作物を、一定の順序で周期的に変えて栽培すること。土の中の栄養素や微生物生態系が偏るのを防ぎ、炭素を土壌に留める健康な根っこを育てる。

合成肥料の不使用

合成肥料ではなく有機肥料を使用し、土壌の健康を改善する。合成窒素肥料を使わないことで、農業における炭素の発生を抑える効果もある。

 

ビジネスブランドの取り組み

イギリスのコスメブランドLUSH(ラッシュ)と、イギリスのの消費者団体であるエシカルコンシューマー・リサーチアソシエーションが、環境や社会の再生に取り組むリジェネラティブなプロジェクトに総額20万ポンド(約3,200万円)を授与する「Lush Spring Prize 2023」のエントリー募集を開始。

アパレルのパタゴニアは、気候変動や食糧不足など、世界が抱える問題に対して最も効果的な方法のひとつとしてリジェネラティブ農業に取り組んでいて、2017年にアメリカの他社ブランドと協力し「リジェネラティブ・オーガニック認証」を制定。

リジェネラティブ・オーガニック認証制度の基準
・有機認証を取得すること
・不耕起栽培または省耕起栽培であること
・植物による土壌被覆が25%以上であること
・作物の種類と生育場所を周期的に変える輪作を行い3種類以上の作物または多年性植物を利用していること
・土壌の再生を促す農業技術を3つ以上取り入れていること

2020年からはリジェネラティブ・オーガニック認証のパイロットコットンを栽培するため、150以上のインドの農家と提携しました。そして現在はリジェネラティブ・オーガニックコットンを使用したTシャツの販売を開始しています。

またコーヒーチェーンのスターバックスは、チェーン全体でCO2の排出量を減らすべく、牛乳より生産時の環境負荷が低いオーツミルクの導入を進めています。また植物由来の原材料を使用した食品・飲料を活用することにより、持続可能なビジネスモデルを目指しています。

 

日本での取り組み(2)

農業は、世界中の年間温室効果ガス排出の約4分の1を占めるとも言われます。
二酸化炭素やフロンガスなどがよく知られていますが、2009年、アメリカ海洋大気局(NOAA)の研究者のまとめによると、農薬や化学肥料を使った農地から排出される亜酸化窒素ガスの報告があります。

農薬・化学肥料・家畜の排泄物に含まれる窒素肥料をまいた農地などから発生する亜酸化窒素ガスが、地球のオゾン層を破壊する要因である
因みに亜酸化窒素ガスは地球温暖化の原因の一つといわれる二酸化炭素の約310倍の温室効果がある。

様々な問題が明らかになっていく中で、
農薬・化学肥料を使わず、消費者にハッとするほどおいしくて、安全な食料を提供するために、リジェネラティブ農業の取り組みは、日本ではどのように進んでいるのでしょうか。

関連記事:「有機野菜を気軽に買いたい」でご紹介したように、
有機野菜の栽培面積でさえ、令和元年8月時点で、日本では全体の0.2%にとどまっていますから、
リジェネラティブを推し進めている農家さんの存在は、もっと少なく貴重なのではないでしょうか。
リジェネラティブな不耕起自然栽培をすすめる農園をみる

このように海外では普及しつつある再生型農業ですが、日本ではまだまだメジャーではないのが現状。
消費者がリジェネラティブへの理解を深め、普段の食生活に取り入れるようにすれば、供給側の人件費や価格、流通システムなどの問題は改善され、わたしたちはより良い食糧を、未来を、確保できるようになるはずです。
不耕起自然栽培の野菜をみる